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最近の情報で、意外なことが2つありました。
第1はインプラント施術者中 、わずか4%(250人中10人 )のドクターによって使用本数の60~70%のシェアが占められている事。
第2に50%を超るドクターが上顎にはインプラント治療を行わないということです。
理由としては、前歯部では、通常フィクスチュアーの植立方向が下顎に対してずれてしまい、それを修正して患者さんが審美的
に満足できる補綴物を製作する自信がない。
臼歯部では上顎洞の関係で十分な長さのフィクスチュアーが埋入できず、これを骨移植等で補うには専門的になりすぎて、
簡単には手が出せないということのようです。
患者さんが希望しても、現在のマニュアルに従うとX線等の検査によってかなりの症例が不可能になるようです。
当医院においても、この問題は長年の課題でした。
埋入角度を変えることにより、より長いフィクスチュアーが埋入可能なことに気がつき、50年ほど前より挑戦して
それなりの成果を上げてきました。
この角度が大きくなると傾斜埋入といわれるようです。
ただし、フィクスチュアーに埋入角度をつけると上部構造で修正しなければなりません。そこで長年の上部構造を曲げる
苦労から新しい発想のアングルヘッドを考えてみました。
傾斜埋入の臨床例とともにご紹介します。
昨日
今日
図9
図4 下から見た図
図3 切削形成図
図2 TKアングル
中央ストレートタイプ
右側アングルタイプ
図11
図5 形成用模型
図10は角度を修正した図です。
図11は補綴完成図(|5はロングタイプ)
角度が自由に切削形成できることにより、連結が容易なことと、ショルダ-をつけてフィクスチャ-上部
から直接修正できるため、審美性にも問題ありません。
また、このケ-スは両方とも16mmのフィクスチャーを使用していますから、耐久性についても
期待できると思っています。
TKアングルは、対合歯に対して長軸の角度を変えても、長いフィクスチャ-が埋入できれば結果、耐久性は増すという考えを基に、
その上部構造の修正を目的に考案しました。
図6は術前のパノラマです。
| 6部位にマニュアル通りに埋入すると8mmのフィクスチャーが埋入できるかどうかの骨幅ですが、口蓋側への傾斜埋入により12mmのフィクスチャ-が埋入できました。
TKアングルは複数のインプラントの連結を想定して(天然歯を含めて)考案しました。
既製のアングルヘッドは垂直方向には角度が15度、20度の2種類しかありません。
水平方向にも制約があります。更に方向修正の切削がし難い形態ですから複数の連結には
向いていません。
従って、連結を前提に複数のインプラントを埋入する場合には、それらの埋入角度はかなりの制限を受け、
その結果埋入不可能になったり、フィクスチャーの長さが短くなることが多くあります。
そのため、殆んどのインプラント施術者は単独植立にするか,連結を必要とする場合にはその平行性に気を使い、
苦労しているようです。
TKアングルは埋入角度にはとらわれず極力長いインプラントを埋入して、その後上部構造で角度を修正して、機能性、審美性において
完全に近い補綴物を製作することを目的に考案しました。
TKアングルの素材はTit-6Al-4Va-ELIを使用しています。この材料は外科用インプラント部材に使用可能とするアメリカの認定を受けています。この合金は純チタンに比べて約2倍強の引っ張り強さがあります。又、弾性率は1/2 以下ですから、
純チタンに比べて強度はありますが、切削はより容易です。
強度試験;東京都城東地域中小企業振興センターに於ける破壊テストにおいて水平方向に力をかけて
約100kgを記録しています。
当院で500症例以上の臨床経験がありますが、アバットメントの破損、オクルーザスクリューの破損は1例もありませんでした。
上部構造仮着時に、35Nで締めたオクルーザルスクリューにゆるみが生じたことが
2,3例にありました。
オクルーザルスクリューのゆるみは傾斜角度が大きい症例に認められました。
図9:|2部位の歯槽骨の幅が薄かったので、骨のある|1寄りに傾斜させて埋入しました。
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小幡 卓郎 : インプラントの傾斜埋入を考察する -新しい発想のアングルヘッドを用いた症例
デンタルダイヤモンド 2003 ;28(11):117-126
Obata Dental Clinic